pode ser um romance

里山逍遥 memorandum 「風薫る河原で」

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アオサナエ(サナエトンボ科)

まるで、忘れ物を探すかのように、急に思い立って訪ねた河原。
ところが、沈下橋の下流は護岸工事で見るも無残な光景になっている。幸いなことに橋の上流域はあの頃のままの河原が残っていて、密かに期待しながらも水際を歩きはじめる。
遠くではカジカガエルも鳴いている。そういえばあの時もそうだった。
5月、風薫る川辺。こんなふうに明るい河原でそのトンボが来るのをじっと待った。水面を目にも止まらぬスピードで往来し、見失ったかと思うといつの間にかお気に入りの場所に戻っている。そんなことを何度か繰り返しているうちに彼らの飛翔パターン、つまり縄張りの範囲が読めてくる。
あとはポイントを決めてひたすら待つ。トンボの撮影は50%以上の確率でまちぶせ型が成功する、というのが私の持論だ。



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それから十数分後、思いどおりの場所に止まった。1mまで近づければしめたもの。あとは匍匐前進でパチリ、パチリとシャッターを切りながらにじり寄る。
トンボの目玉は複眼といって、小さな目玉がいっぱい寄り集まったようになっている。視野は恐らく180度以上で超広角。おまけにとてもハイセンサーときている。だから、どんなに慎重に近づいてもとっくに察知されているはずだ。いったん飛び去ればまたしばらくは戻って来ない。トンボの撮影は一進一退、じーっと我慢くらべなのだ。



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気が付けばもう小一時間もここに座っていた。その間、訪れた撮影チャンスはほんの数回だけど、久しぶりにあの頃のトキメキでアオサナエを待った。
対岸の草地の向こうでは、家族連れや若者たちで賑わっている。こんないい時季に、いいオジサンが水際で這いつくばってトンボを撮っているなんて、きっと滑稽だろうね。それにしてもファインダーに浮かぶアオサナエの肢体は端正で美しい。この一時だけは、頭の中からスミレモードは完全に消えていた。

<撮影機材>
SONY cybershot RX100Ⅱ



by windy1957 | 2014-05-19 00:11 | memory of Satoyama