里山逍遥 No8 「小さな谷に舞い降りた春」
あたりはまだ枯れ色で、お目当ての愛おしい花の気配はちょっと薄い。「まだ早かったかな…」 と思った瞬間、枯葉の上にすっきりと開いた薄紅色の花弁が目に飛び込んだ。
今年も逢えた。
それは、この森の小さな谷にひっそりと花を付けるオオミスミソウだ。
春まだ浅い雪国では、スハマソウ、ミスミソウと並んで色とりどりの 美しい花を林床に咲かせる。
今春は思いのほか花粉が飛び交っているという。鼻水、なみだ目、クシャミにも負けず、小さな谷にはシャッターの音だけがいつまでも響いた。
こちらは花弁が薄紅色のタイプ。
淡い春の陽射しの中、この時季は花々がとっても愛おしい。いつまで眺めていても飽きることがない。
オフホワイトの花弁が柔らかい陽射しに透けていた。背丈はせいぜい6,7センチといったところ。撮影はアクロバットのような姿勢でシンドイ。
とっても静か。時折、ウグイスの地鳴きが聞こえるくらい。
陽光に映える花柄の繊毛が、いかにも寒冷地の植物らしい。
どんなふうに切り取ろうか、思案しながらも悪戯のように撮らされてしまう。デジカメは、フィルム代を気にしなくてすむのがなんとも助かる。
それでもファインダーに浮かび上がった花姿は、筆舌に尽くしがたい雰囲気がある。
伝えたい気持ちを分かっていただければ幸いだが、蕾が開き始めた時の感動は、やっぱり上手く伝えられない。
オフホワイトの色合いがなんとも清楚な感じだが、アングルがどうも…
この日は愛用の90mmマクロレンズが大活躍。結果は大いに自己満足なので、細かなところは大目にみてくださいな。
人知れず、ひっそりと咲くオオミスミソウ。
なぜ、この森に…。
それはナゾのままでいい、あまり突き詰めて考えないことにしよう。
最早、この森のれっきとした住人なのだから。
The End
by windy1957
| 2013-03-12 23:00
| memory of Satoyama